園だより『元気いっぱい 2025年7月号』
- fk-studio
- 2 日前
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【子どもの場所に名前をつけるということ】
幼稚園の中には、子どもたちが毎日を過ごすたくさんの場所があります。大型遊具、水遊び場、遊歩道、菜園、図書コーナー。テントやベンチのあるスペース。こうした日常の風景に名前をつけると、不思議なことに、その場所がぐっと身近で特別なものに感じられるようになります。
たとえば夏の水遊び場「あひるヶ池」は、季節が巡ると「ゴロゴロくまガーデン」に。どちらの名前もロゴマークの動物が由来です。


遊歩道を、「ひょいと入る」という意味の「Pop in=ポッピン」と呼んでみると、そこにはただの園庭の道ではない、小さな物語が生まれます。「今日は『あひるヶいけ』で水を流して、葉っぱの船を浮かべたよ」と話す子どもたちの目は、生き生きと輝いています。名前を持つことで、子どもたちはその場所に対して親しみと愛着をもち、自分たちの園生活をより豊かに感じるようになるのです。

また、場所に名前があることで、保育者や保護者との間にも共通のイメージが生まれます。「『Pop in』でお散歩していたら、年長さんが植えたプランターのお花に、てんとう虫を見つけましたよ」と伝えれば、保護者の中にもその空間が想像され、子どもたちの一日のエピソードがより鮮明になります。保育者同士も、「今、○○ちゃんは『たからじま文庫』にいますよ」といったやりとりが自然にでき、園内での動きもスムーズになります。
さらに、名前を考える過程そのものも大切です。子どもたちが、自分たちで花や種を植えたプランターに名前を考えたり、誰に見て喜んでもらいたいか等話し合ったり、またそれを伝える方法を考え、作り出したりすることで、場所への関わりが深まることもあります。これはまさに、環境を通して育ちを支える保育のひとつの形とも言えるでしょう。
場所に名前をつけるという、ささやかだけれど意味のある工夫。それは、子どもたちの遊びや学びを支える舞台を、より豊かに彩ることにつながります。そして、子どもたちの記憶の中に「大好きだった“あひるヶ池”」や「毎日通った“Pop in”」として、あたたかく残っていくのです。
富士中央幼稚園・教育ディレクター
法人理事 小林浩子